大阪地方裁判所 昭和25年(ヨ)945号 決定
申請人 大山まさ 外二十二名
被申請人 東宝株式会社
一、主 文
申請人等の申請を却下する。
申請費用は申請人等の負担とする。
二、理 由
申請人等がその従業員たる地位を仮に定める仮処分命令を求める理由として主張するところは、要するに、被申請人が申請人等に対してなした解雇の意思表示が一、右解雇は申請人等の団体交渉権を無視して行われたものであること、二、申請人等は被申請人が右解雇に際して発表した解雇基準に該当しないこと、三、右解雇は申請人等の属する労働組合を圧迫することを目的としてなされたものであること、という理由によつて無効であるというに帰するので、この点について考へてみる。
(一) 労働組合の使用者に対し団体交渉を求める権利と使用者のこれに応ずべき義務とは労働組合法の認めるところであるけれども、解雇に際して組合の要求する程度の団体交渉が行われなかつたとしても、特に労働協約等においてそのことを解雇の要件としていない限り、右は解雇を無効にするものではないのであるが、そのような要件を定めた労働協約等の存在は申請人等の主張疏明しないところである。
(二) 使用者が予め解雇の基準を労働組合との協定によつて労働協約のうちに定めたり、或は就業規則中に規定した場合には、右基準に該当することは解雇の要件をなし、これに違反して行われた解雇を無効ならしめる場合があるというべきであるけれども、使用者が企業整備に際して発表する企業再建整備計画の説明書中に掲げる人員整理基準の如きは、使用者がその行おうとする人員整理のできる丈け公正なことを担保するとともに、整理方針を従業員ならびに第三者に説明するために記載するものであつて、未だこれを以て使用者を拘束する解雇の要件をなすものとは考へられず、従つて仮に被解雇者中右基準に該当しない者があつたとしても、そのこと丈けでは、解雇を無効にするものとはいい得ない。
(三) 一つの企業内に二以上の組合が併存するとき、一の組合を圧迫することを目的として、これを他の組合に比して著しく不利益に取扱うことは不当労働行為を構成すること申請人等主張の通りであるけれでも、申請人等の主張する、単に両組合の被解雇者の比率において多少の差のあることや、数百名の被解雇者中一組合の幹部が数名含まれていることを以てしては、未だ一組合に対し著しく不利益な取扱をしたということにはならないし、その他被申請人が本件解雇に際し申請人等の属する労働組合に対し著しく不利益な取扱をしたという事実の疏明はない。
以上申請人等の本件解雇を無効とする主張は凡て採容するに足らないから、申請人等の申請を理由なきものとして却下することとし、申請費用の負担について民事訴訟法第八十九条第九十五条を適用して主文の通り決定する。
(裁判官 坂速雄 宮川種一郎 沢田直也)